日本の住まいと断熱

1. むかしむかしの断熱

むか~しむかし「住まいは夏をむねとすべし」が
日本の断熱の基本でした。

日本の住まいづくりは、高温多湿な夏から人と建物を守ることに重点がおかれてきました。
まず強烈な太陽熱をさえぎるために、断熱性に優れた「わらぶき」・「かやぶき」の屋根が発達しました。
また太陽熱を直接室内に入れない工夫として、「よしず」や「すだれ」などの道具が利用されています。

日本の住まいづくりの特徴は、自然の力をも取り込むことにあります。太陽からの熱は夏と冬では性格が異なります。この太陽光に対して南面や西面に落葉樹を植えることで、夏は直射日光が入るのを防ぎ、逆に冬は太陽の熱を利用する、といった工夫がみられます。

建物の中に“風の道”があるのも日本の住まいづくりの知恵です。まず建物の周囲には大きな窓が設けられています。その他の壁についても「土壁」や「下見板張り」※1)といった、通気性に優れたものがあります。また「欄間」※2)をとおして屋内の空気の流れも確保されています。

※1)下見板張り…木のムク板を横向きに、壁の下から少しずつ重ねながら張っていく工法。雨粒は板を伝って下へ落ちていく。
※2)欄間…天井と障子や襖の間の空間のことで、採光や通風を目的としたスペース。格子や透かし彫りなどの装飾を施される場合が多い。

一方日本の寒い冬の対策は、囲炉裏や火鉢で人がいるところだけを暖める、いわゆる「採暖」という方法です。欧米のようなセントラルヒーティング※3)や、他のアジアの国のような床暖房※4)が発達することはありませんでした。「採暖」では部屋全体・建物全体を暖める能力はなく、あとは服を着込んでひたすらガマンするしかなかったのです。

※3)セントラルヒーティング・・・1ヶ所の熱源機によって家全体の暖冷房を行う方式で、熱を送る媒体によって「水方式」「空気方式」「熱媒方式」などに分けられる。

※4)床暖房・・・床下にとおした温水や電気パネルによる輻射熱を利用した暖房方法。朝鮮半島では蒸気や煙を利用した「オンドル」が有名。

解説

を乗り切る先人の知恵

「よしず」は3mくらいの葦とシュロ糸を結んで作ります。壁に立て掛けて使い、太陽光を遮りながらも、葦の間のすき間から風が流れます。
「すだれ」は本来竹を細かく割き、綿糸で編んで作りました。窓の外に垂らして使い、「よしず」と同様に遮熱と通風機能を備えています。軒の出が深い以前の日本住宅では「すだれ」を使って、広範囲の日陰をつくることができました。

然と共生する住まいづくり

日本の住まいづくりは、欧米のような自然から身を守るシェルター的な考え方ではなく、自然と共生しているのが特徴です。周囲の水田や中庭に配した池が気流を生み、風の流れをつくりだします。南や西に面した庭に広葉樹を植えることもそのひとつ。夏は繁った葉っぱが太陽熱の進入を防ぎ、冬は木々のすき間から入る太陽光から、暖をとることができます。

たすらガマンの冬

火に弱い木造住宅が主流の日本では、床暖房が発達した中国や韓国とは対象的に、冬を快適にする工夫や道具は発達しませんでした。主な手段である囲炉裏では部屋全体や建物全体を暖める力はなく、間近に寄らなければ暖かくありません。これは「暖房」というよりは「採暖」とよばれるもので、現代のホットカーペットやこたつに通じるものです。