【土木構造物への基礎工法選定】小口径回転杭工法の活用ガイド
土木分野で鋼管を主とする杭工法を挙げると、回転杭と鋼管ソイルセメント杭(道路橋示方書に掲載のある杭工法)が代表的です。
しかし実務の現場では、これらの工法に対して次のような認識をお持ちの方も少なくありません。
- ✅ 通常はφ400以上の鋼管径が前提となる
- ✅ 羽根径が鋼管径の1.5~2.0倍程度であり、支持力が不足する場合がある
- ✅ 回転杭の施工機械は、狭小地や高さ制限などの施工条件に対応できる機械が限られる
- ✅ 鋼管ソイルセメント杭は大型機械を用いた施工になる
- ✅ 鋼管ソイルセメント杭は建設残土が発生する
その結果、
「特殊な現場の状況に応じて回転杭や鋼管ソイルセメント杭を使いたいと思っても、施工性・環境対応性・費用面が課題になる」
というお悩みをいただくことがあります。
土木構造物の基礎工法選定では、支持地盤や荷重条件に加えて、施工ヤードの広さ、上空制限、近接構造物への影響、施工時間帯の制約など
、現場ごとに異なる多くの条件へ対応が求められます。
さらに、橋梁・上下水道・擁壁など分野ごとに準拠する設計指針が異なるため、検討段階で「どの基礎工法が自案件に適合するか」を見極めることが重要です。
本稿では、こうした課題に応える「EAZET」および「ATTコラム」について、土木分野における位置づけ、最新指針への対応、 構造物タイプ別の採用ポイントを整理してご紹介します。基礎工法の比較検討の参考としてご活用ください。
EAZET・ATTコラムの概要
旭化成建材では、土木構造物の基礎工法として、現場条件と構造物特性に応じて選択可能な2つの工法をご提供しています。
EAZET(小口径・回転杭工法)
EAZET イメージ画像
鋼管(φ114.3〜508.0mm)の先端部に鋼管径の1.87〜3.03倍に拡大したらせん状の羽根を備え、専用の小型施工機械で直接地盤に回転貫入させる工法です。
先端羽根の効果により、小口径でありながら高い鉛直支持力・引抜き抵抗力を発揮します。
施工時に水・セメントミルクを使用せず、排土も発生しません。
道路橋示方書に標準として記載される回転杭は杭径φ400mm以上の大口径仕様が前提ですが、EAZETは独自の建設技術審査証明(第54号)の取得により、
φ114.3mm以上の小口径仕様でも道路橋示方書に準拠した設計が可能です。
ATTコラム(羽根付き鋼管ソイルセメント杭工法)
ATTコラム イメージ画像
セメントミルクと現位置土壌を混合撹拌した改良コラム体に、らせん状の羽根を多段に備えた鋼管を一体化させるハイブリッド杭工法です。
コラム体周囲の地盤との間で大きな摩擦力を発揮し、改良コラムと一体となった杭本体は高い水平抵抗力を発揮します。
明確な支持層が深い地盤や、軟弱地盤での経済的な設計が可能です。
両工法の使い分け
土木分野では、構造物の力学特性と地盤条件に応じて両工法を使い分けます。
例えば、鉛直荷重が主体で支持層が明確な構造物(水管橋、小規模橋梁、擁壁、カルバート等)にはEAZETが、
例えば、大きな引抜き力や水平抵抗が求められる構造物(送電鉄塔等の塔状構造物)や、支持層が深く周面摩擦を活用したい場合にはATTコラムが、
選定されるケースが多くなっています。
土木分野で評価される理由
1. 各種設計基準・技術評価に対応
土木分野の杭基礎は、道路橋示方書・同解説Ⅳ下部構造編に準拠して設計されることが多いのが現状です。
道路橋示方書はH29年(2017年)に大幅な改訂が行われ、設計手法が許容応力度法から部分係数法へと変更されました。
EAZET・ATTコラムは、いずれも道路橋示方書に準拠した技術評価を取得していますが、対応する設計手法は工法ごとに異なります。
- ・EAZET:道路橋示方書・同解説平成24年改訂(許容応力度法)に加え、道路橋示方書・同解説平成29年改訂(部分係数法)のどちらの手法にも対応可能
- ・ATTコラム:道路橋示方書・同解説平成24年改訂(許容応力度法)と鉄道構造物等設計標準・同解説基礎構造物による設計に対応可能
EAZET
(一財)国土技術研究センター 建設技術審査証明
第54号(2023年3月取得)
ATTコラム
(公社)土木学会 技術評価証
第0015号(2024年3月取得)
2. 道路橋示方書 掲載工法より広い適用範囲
道路橋示方書には回転杭工法・鋼管ソイルセメント杭工法が掲載されていますが、これらの標準工法には適用範囲に一定の制約があります。 EAZET・ATTコラムは独自の技術評価を取得することで、この範囲を超えた条件でも設計が可能であり、この点が土木分野で評価されています。
| 項目 | 道示掲載の鋼管回転杭 | EAZET | ATTコラム |
|---|---|---|---|
| 鋼管径 | φ400mm以上 | φ114.3mm~ | φ114.3mm~ |
| 鋼管の最小肉厚 | 9mm以上 | 6mm以上 | 6mm以上 |
| 支持層の土質 | 砂・砂礫層のみ (粘性土は適用外) |
砂・砂礫・粘性土に対応 | 砂・砂礫・粘性土に対応 |
| 適用N値 (砂層の例) |
30≦N≦50 | 25≦N≦50 | N>0から設計可能 |
道路橋示方書に掲載される鋼管回転杭は「支持層は砂・砂礫層」「鋼管径は400mm以上」「鋼管の最小肉厚は9mm以上」が適用の前提とされ、これらから外れる仕様については別途、載荷試験等による検討が必要とされています。
これに対しEAZETは、建設技術審査証明(第54号)の取得により、φ114.3mmからの小口径仕様や、道示の標準工法では適用外となる粘性土支持層、
N値25以上の砂層といった条件でも設計が可能です(※道路橋示方書に準じて設計する場合のN値は、砂層は30≦N≦50、粘性土層は20≦N≦50とする)。
ATTコラムは、大きな周面摩擦力を活用できる工法特性から、N値が0を超える地盤であれば比較検討が可能で、軟弱地盤や支持層が深い地盤でも経済的な設計を実現します。
土木構造物の更新・耐震補強では、小口径杭での対応や軟弱地盤・粘性土地盤での施工が求められる場面が多く、道示の標準工法では対象外となるこうした条件に対応できる点が、
EAZET・ATTコラムの大きな選定理由となっています。
3. 施工面での優位性
土木現場での施工性能について、他工法と比較した特徴は以下のとおりです。
| 項目 | 中堀工法・三点式 | EAZET | ATTコラム |
|---|---|---|---|
| 必要施工ヤード | 約600㎡~ | 約50㎡~ | 約120㎡~ |
| 上空制限対応 | 制限あり | 2mの超低空まで対応可能 | 短尺リーダー機で対応可能 |
| 残土発生 | 多 | ゼロ(無排土・無水施工) | 少(コラム体積の約30%) |
| 撤去性 | 困難 | 逆回転で引抜き回収可能 | 困難 |
狭小地での搬入・施工や、離隔位置への杭打設といった対応力は、実際の施工映像でご確認いただけます。1m以下の搬入路に対応する超小型機(SSSタイプ)や、 作業半径約6mで離れた杭心に打設できるリーダレスタイプの稼働シーンなど、各施工機の動きを動画で公開しています。
構造物タイプ別に見る採用ポイント
土木構造物の基礎計画では、構造物に作用する荷重条件や施工条件に応じて、最適な基礎工法を選定することが重要です。ここでは、代表的な土木構造物ごとに、構造上の特徴とEAZET・ATTコラムが適する条件を整理します。
| 主な設計・施工条件 |
|
|---|---|
| 適用ポイント |
|
水管橋基礎工事
水管橋基礎工事(上空制限)
| 主な設計・施工条件 |
|
|---|---|
| 適用ポイント |
|
擁壁基礎工事(既存物近接施工)
擁壁基礎工事(完成時)
| 主な設計・施工条件 |
|
|---|---|
| 適用ポイント |
|
歩道橋基礎工事(狭隘地、夜間施工)
歩道橋基礎工事(完成時)
| 主な設計・施工条件 |
|
|---|---|
| 適用ポイント |
|
上下水道設備基礎工事(超小型機)
上下水道設備基礎工事(短尺機)
| 主な設計・施工条件 |
|
|---|---|
| 適用ポイント |
|
杭基礎施工後のカルバート設置状況
杭工事+カルバート設置(完成時)
道路管理装置での採用イメージ
| 主な設計・施工条件 |
|
|---|---|
| 適用ポイント |
|
増し杭基礎工事(狭小地)
増し杭基礎工事(完成時)
増し杭採用イメージ
設計・施工検討サポートのご依頼
構造物の種別・準拠指針・地盤条件・施工条件の組み合わせによって、最適な杭仕様や工法は大きく変わります。計画概要をご共有いただければ、EAZET・ATTコラムを用いた最適な杭仕様の検討、概算コスト・工期の目安、施工計画上の留意点をご提示します。基礎設計の初期検討・工法比較の段階からご相談いただけます。またすべてのサポートは費用はかかりません。
「杭が必要かもしれない」という検討初期の段階から、お気軽にお声がけください。
