基礎TOPICS Vol.54

ATTコラムの適用構造物

ATTコラム工法は、周囲の地盤を乱すことなく築造された柱状改良体と羽根付き鋼管を組み合わせた 鋼管ソイルセメント杭に分類されるものです。この工法は、地盤と柱状改良体との密着性が高く、 鋼管から改良体へ効果的に荷重が伝達されることから、高い支持力・引抜力・水平抵抗力を発揮します。 そして、2002年の販売開始以来、累計8000件を超える実績を築いてきました。
ATTコラムは先端付近のN値に関わらず柔軟な設計提案が可能で、幅広い地盤で採用実績があります。

また、2011年 東北地方太平洋沖地震や2024年 能登半島地震における液状化の発生地域においても、適切に地盤の評価を行うことで支持力性能を発揮し建物を支持しました。
今回の基礎TOPICS Vol.54では、このATTコラムの実績を振り返り、どのような構造物が適しているか、その概要をご紹介いたします。

ATTコラム用途の分類

ATTコラムの用途について、見ていきましょう。
右の円グラフでは、一般的な建物としての用途を青系、その他建築物(工場内の設備の基礎や建屋本体、工作物、耐震補強などの用途)を赤系のチャートで示しております。

【人々の暮らしを身近で支えてきた“ATTコラム”】
先ず、圧倒的に多い用途が集合住宅です。背景には、首都圏の軟弱地盤エリアを中心に、都心勤めの世帯をターゲットとした住居の開発が積極的に行われたことにあります。特に多いエリアは、東京都江戸川区、江東区、葛飾区、神奈川県川崎市、埼玉県川口市、さいたま市、千葉県船橋市などです。
集合住宅に続いて、建物の用途としては、教育施設や商業施設、医療施設といった人々の暮らしに身近な構造物で多くあります。


【多様な経済インフラを支えてきた“ATTコラム”】
その他建築物では、工場内の建屋や設備の基礎としての実績が多く、これはプラントの多くが海沿いの地盤が軟弱な工業地帯に展開しているためです。次に多いものが鉄塔です。鉄塔は、搭状比が大きく引抜力の負担を求められるケースが多いことから、 ATTコラムが採用されてきました。耐震補強では、既設建築物・構造物への増し杭によって、水平抵抗力を補うために採用されてきました。

建物における構造別・階数別件数

最も実績が多い建物について、構造別(S造:鉄骨造、RC造:鉄筋コンクリート造、SRC造:鉄骨鉄筋コンクリート造、WRC造:壁式鉄筋コンクリート造、木造)及び階数別の件数を以下の棒グラフに示します。1~4階までの低層では鉄骨造で多く採用されておりますが、5階以上になると鉄筋コンクリート造での割合が多くなります。鉄筋コンクリート造で9~10階以上の建物になると、杭1本あたりに求められる長期支持力は1000kNを上回るケースが多いですが、地盤条件がATTコラムにマッチすると採用できる場合があります。これまで、PHC杭や場所打ち杭で計画されていたケースでも、ATTコラムを採用することで建設廃土の発生を抑制しつつ狭小地でも打設でき、コストダウンや建設計画の最適化に寄与できる可能性があります。是非、こちらのグラフを参考に、ATTコラムの採用を検討してみてはいかがでしょうか?  最後に、ATTコラムが採用された集合住宅での事例をご紹介させていただきます。


狭小な敷地条件におけるRC造7階建での押込・引抜性能の活用

狭小な敷地でRC7階の構造でATTコラムを採用頂いた事例です。
計画の制約として、以下2点の課題がありました。

【①敷地面積90㎡での施工】
ATTコラムの作業有効面積は、原則120㎡以上が必要です。
本件については、90㎡弱の敷地内で、プラント・水槽の配置が難しいため、隣地の駐車場を借りて施工することを提案し採用いただきました。
作業有効面積を広げATTコラムの施工を可能としました。



【②搭状比が大きい構造物への対応】
RC造7階建ての事務所ビルだったため、終局支持力・引抜抵抗力ともに大きく、通常の羽根付き鋼管杭では現実的な杭配置が困難でした。摩擦杭として採用されることの多いATTコラムですが、本事例では高いN値の砂礫層に確実に到達させ、根入れをしております。これにより、周面摩擦力に加えて先端支持力も得ることで大きな支持力・引抜抵抗力を実現しました。結果的に、敷地内に収まる本数での設計が可能となり、ご採用いただきました。





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